東京都中野区に住んでいる三好亜矢子です。 おしゃれにエコシフトする中野区民31万人の挑戦に向けて、 日々是学習、思考、行動。 「まちをデザインする」を執筆中。

2009年11月25日水曜日

待機児対策、待ったなし ~行政と企業でできること~


●待機児は327名
 今年4月1日現在、中野区の待機児の数は旧定義(認可保育園への入園を求める人の数)で327名。実際にはその半数弱は認可保育園に入ることをあきらめ、無認可の保育所などに預けています。一方、「とても入れそうにない」と最初から申し込み自体をしなかった家庭も多く、潜在的なニーズはさらに大きいと考えられます。

●予想を超える保育ニーズ
マンション建設ラッシュの続 く江東区の例をあげましょう。同区は若いファミリー層の流入により2年前の待機児は352人。そのため、区としてマンション建設の要件として保育所設置の要綱を定める、認証保育所などを積極的に誘致するなど90億円を投資。その結果、1200人分の定員増を達成して一息ついたと思ったらとんだ見当違いだったそうです。あっという間にその枠は埋まり、さらに300人の待機児が出てしまったそうです。私は女性たちが悲鳴をあげているように感じられてなりません。「『男は仕事、女は家庭』なんて誰が決めたのだ」という叫びです。

● 働きたいママは8割
3歳未満の子どもを持つ女性 の就労率を欧米と日本で比較すると、欧米は6割ですが日本は3割弱に過ぎません。では、日本のママたちは働きたくないと思っているのでしょうか。内閣府の最近の調査によれば、ママたちの実に8割は保育環境さえあれば働きたいと答えているのです。仕組みがないばかりに能力も経験も豊かな女性たちが仕方なく家庭に引っ込んでいるのはとても大きな損失です。  11月24日、朝日新聞の夕刊でショッキングなタイトルの連載が始まりました。「女性活用小国のカルテ」です。国連開発計画09年版「人間開発報告書」の指標の一つ、女性の活躍度を示す「ジェンダー・エンパワメント指数(GEM)(注)」で日本は109カ国・地域のうち57位だったことが紹介されていました。
 1  スウェーデン
 2  ノルウェー
 3  フィンランド
 4  デンマーク
 5  オランダ
 6  ベルギー
 7  オーストラリア
 8  アイスランド
 9  ドイツ
       中略
    27日本(95年) 
 54 ホンジュラス
 55 ベネズエラ
 56 キルギス
 57 日本
 58 スリナム
 59 フィリピン
(注)1995年、北京で開かれた第4回女性会議をきっかけに女性の意思決定への参加度を見える形にするためにスタート。国会議員や管理職、専門・技術職の女性比率、男女の賃金格差などを評価。

「世界第2位の経済大国が57位なんて信じられない」というのが正直な感想でしょうか。しかし、環境が整備されないために女性が働きたくても働けないという現実を見れば、実態とかけ離れた数字とはとても思えません。
●思い切って取り組む
前述の江東区のように作って も作ってもなお、保育ニーズに応えられないという現実に対して、行政には待機児は何が何でも出さない、100%答えるという断固たる姿勢が求められていると思います。子どもの社会性を高める、濃密過ぎる親子関係にゆとりを持たせるなどの集団保育のメリットは数多いですが、私が強調したいことは一つ。なぜ女性が母親になった途端に働くことを我慢しなければならないのかという点です。
●男性の育児休業取得を応援
 待機児問題の影であまり取り上げられないのが男性の育児休業の取得率の低さです。少し前の数字ですが、2003年、女性の取得率64%に対して男性は0.33%でした。男女に変わりなく育児休業法の改正により、取得期間が現在の1年から1年6ヶ月に延長され、休業時の給付金も休業に入る前の賃金の50%が給付されることになりました。男性の子育てを社会の文化として積極的に応援することが大切だと思います。(続く)

2009年11月1日日曜日

施設と在宅が連携 ーホームシェアリングー


                     ゆうらくではリフトなど福祉機器が縦横に
                          活用されている。


 ゆうらくの続きです。


 同施設は、03年度から06年度にかけて厚労省の未来志向研究プロジェクト「ホーム・シェアリング」を実施しました。5ユニットの1室、計5室をホームシェアリング対応にあて、利用者は在宅と施設を1~2か月ごとにローテイションする方式です。06年度には1週間単位で在宅と特養をスイッチしました。


 同施設の仕掛け人である山野良夫参事は「介護の技術も充分、受けていない家族が在宅介護でくたくたに疲れているのを見ていられない。プロならではの技術を生かしたい」とのことから出発したそうです。


 同施設がまとめた報告書「平成18年度 老人保健健康増進等事業 在宅ケアマネジャーを中心とした在宅と施設機能の有機的連携事業報告書」を読んで、特に印象的だったのは次の4つです。




 ①利用者の状態の改善 


  ●質の高いケアと居心地のよい環境を提供できる施設で利用者の体力、意欲が回復する

  ●家族のレスパイトにも効果的。


 ②入所者との交流


  ●1週間ごとに外からの風が入ってくることで、施設の入所者にいい刺激となる。


 ③財政面での負担軽減


  ●在宅よりも施設利用はコストがかかるが、在宅と施設を交互に利用することで負担が軽くなる。


 ④ケア体制の確立


  ●居宅のケアマネが在宅と入所時にかかわらず、一貫して担当することで、全体的なケアのシステムができた。在宅と施設との風通しがよくなった。




 上記のプロジェクトは2000年の介護保険導入後の熱気がまだ厚労省のなかに残っていたときに立ち上げられました。その後、次第に予算が削られ、研究プロジェクトは成果が上がったものの、それが全国モデルにはなりきらないまま立ち消えになってしまいました。


 財政的な負担の大きい特養の新設より、今、既に全国におよそ3万ある介護施設と在宅とがいかに有効に連携していくのかが問われています。

施設が「おうち」に進化する


 上野さんの在宅重視のお話しの関連です。「家」であることを追求した施設もあります。



●塀も看板もない「おうち」


 昨年秋に、鳥取県西伯郡南部町落合にある特別養護老人ホーム「ゆうらく」を訪ねました。


米子市駅前から車で15分ほどの距離、田園風景のなかに白を基調にした瀟洒な建物です。56歳で急逝した福祉施設にユニットケアなどの先端的なコンセプトを導入した建築家の外山義氏が設計した最後の作品。一万5千平方メートルの敷地に対して、3階の建物の延べ床面積がおよそ6500平方メートルとゆったりしています。


●おしゃれなリビング

 92名全員が個室を持つと同時に、9つのグループに分かれユニットケアが行われています。ほとんどの方は認知症です。それぞれのユニットのリビングは中庭に面すると同時に外の景色も目に入るようにデザインされていて、内と外の両方に視野が広がります。フェンスも門扉もありません。隣りの田んぼで一仕事した近所のおばちゃん、おじちゃんが、一服しにリビングの縁側にやってきます。


 ユニット同士はまっすぐな廊下でつながらず、それぞれが素通しにならないよう、目隠しの曲がり角を持ちます。コンセプトは収容する場所ではなく、生活する場所として「家」としての雰囲気を作り出すこと。そのための最大の要素が建築というハードです。そこに住む人たちにとっての居心地の良さや気持ちの良さを最大化することです。施設の「おうち化」がここでは実現しています。

2009年10月27日火曜日

住まいとケアを結ぶ 

■元気を増す「協」セクター
 10月13日、「おひとりさまの老後」の著者である上野千鶴子さんをお招きして、中野サンプラザで公開学習会を持ちました。名づけて「暮らしの安心を地域でつくる」
 上野さんは「官」と「私」、「市場」の3つが支配してきた介護サービスの担い手として、最近、着々と成功を収めつつある「協」セクター(Comon・入会地・共同体)の台頭に期待を寄せると語りました。
 「協」セクターの形は以下のとおり。
・ 福祉生協・ワーカーズ・コレクティブ
・ NPO(非営利民間事業体)・農協
・ 高齢協・有限会社・株式会社

■生活支援付きの普通のおうち 
その一例が、生活クラブ生協・神奈川から生まれた厚木市のヒューマン・サービス・ネットワーク(HSN)。介護のニーズを一番、わかっているのは、当事者である私たちとの思いから、それに応えるためのサービスを皆で力を合わせて創り出す運動です。過去10年間で、訪問介護やデイサービスなどを提供するNPO法人や 社会福祉法人まで誕生しています。
その一つ、NPO法人MOMOが設置したサービスハウス(生活支援付きの共同住宅)は企業の独身寮を改修したもの。4階建ての42人定員。終のすみかとなる特別養護老人ホームと似ているようで全く違います。特養が「施設」であるのに対して、サービスハウスは普通のおうち。ここが決定的に違います。どこにでもあるマンションに生活支援が付いているのがポイント。介護度も年齢も関係なし。外部のケアマネや事業者の出入りも自由という風通しの良さが魅力です。

(写真・在宅で暮らすには福祉機器の活用も )

■さて、中野はどうする?
 中野の高齢化率は今年10月1日、20%を超えました。23区平均よりやや上です。区内8つの特別養護老人ホームのベッド数は680。空きを待つ人は1000名を超えています。年に20~30床の入れ替わりですから、入居できるのは全くいつになるかわかりません。「施設」入居を待つのではなく、「在宅」で命を全うするための新しいアプローチが必要です。大きくは二つあります。
① 在宅で訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイなどありとあらゆる介護資源を最大限に使いこなし、カスタマイズ(個別ケア)を追求する。
② 子育て卒業世代の女性や若者の介護に係わる起業を行政として応援する。空き教室や店舗などを行政が提供または積極的に仲介し、インフラ整備に協力する。

2009年9月12日土曜日

火事に弱いまち、中野






 9月1日の防災の日も過ぎてしまいましたが、今日は防災について少し、書きたいと思います。




 東京都では5年に1度、地域危険度調査を行っています。最新の調査は昨年、行われました。


その結果は以下のサイトをご覧ください。  http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/home.htm


 この危険度は大きく次の3項目で①建物倒壊 ②火災 ③総合で評価しています。中野のまちは、固い武蔵野台地に位置していますから、建物の倒壊の恐れはそれほど心配するレベルではありません。恐いのが火事です。危険度は最も安全を1、最も危険を5として5段階で評価しています。中野で最も危険な5とその次の4に該当している地域は、JR中央線よりも北では、警察大学校跡地の早稲田通りの反対側、新井1丁目、野方1~3丁目、5~6丁目、さらには環7近くの大和町1~4丁目などが入ります。南では、本町2丁目、4丁目、6丁目、中央3~5丁目、さらには南台の2~4丁目が該当します。 合計31町丁目。中野区全体が85町丁目ですから、36.47%、およそ4割に達します。中野区全域の半分近くが火事に注意が必要とされているのですから、大きな問題です。

 火災にどう備えるのか、大きくは次の3つがポイントです。

①火事に弱い密集市街地の不燃化

 画一的に6㍍に道路を拡幅するのをめざすのではなく、地域の事情に即した、ポケットパークの設置やフェンスの撤去など修復型のまちづくりが有効だと思います。また、非常時には隣地と通り抜け協定を地域単位で結ぶなどのソフトの施策も重要です。

②防火林の充実
 一次避難所に指定されている近隣公園の周囲に火に強いタイプの高木(トキワカエデなど)を植えます。平和の森公園(沼袋)は広域避難場所に指定されていますが、同公園の設計者である防災の専門家である村上慮直先生によれば、同公園の周囲に配置された防火林は剪定し過ぎていて、その役割が果たせるかどうか、はなはだ疑問だと言われています。
③水の用意
 墨田区が熱心に取り組んでいる路地尊の設置や、ビルやマンションへの防火水槽の設置義務化を定める条例など、中野でも是非、取り入れたいものがたくさんあります。蚕糸の森公園(杉並区)は広域避難場所に指定されていますが、地下に上水道施設を組込んだり、火の粉の侵入を防ぐシャワーを結界のように設置するなどのアイデア満載です。是非、一度、お出かけください。
●上記の写真は、私が中野区上高田の地元で防災について取り組んでいるグループ(上高田住民フォーラム)の仲間と一緒に、防火水槽の掲示板を設置しているところです。昨年、5年前に設置した掲示板を作り直しました。掲示板には、近くの防災倉庫の場所、消防団や防災会のリーダーのだいたいのお住まいの位置を示しています。
 防火水槽は大震災時など断水によって消火栓が使用できなくなる事態に備え、地下に消火用の水を貯める水槽。耐震性のある鉄筋コンクリートか、鋼製が多い。必要な敷地面積は20~30平方㍍。容量は木造住宅1軒が出火したとき、消火に必要とされる40㌧以上が望ましいとされています。
 2006年3月末現在、防火水槽の数はおよそ2万基。10年間で約5千基増加。ただし、全体に占める
公設水槽の割合は8151基で02年をピークに減少。民間のマンションやビルに設置が増えているものの、駅前などに偏り、住宅内の設置は足踏みしています。ポンプ車のホースが届く250㍍四方(メッシュ)に最低1基の防火水槽があるかどうかを充足率と呼びますが、23区内で300箇所の空白地域があります。
 
●そのため、以下の区では、設置を推進するため、条例をつくり、従来の指導から義務として強く
設置を求めています。
 世田谷区(http://www.city.setagaya.tokyo.jp/030/pdf/13146_2.pdf#search=世田谷区建築物の建築に係る住環境の整備に関する条例')や目黒、江戸川、墨田は防火水槽の設置を義務づけています。また、練馬、豊島、台東、江東、荒川、港、足立、新宿も指導から一歩、踏み込んだ条例をつくっています。中野には残念ながら、まだ、ありません。
 












2009年8月13日木曜日

サンフランシスコ市に学ぶ~建築確認ではなく許可へ~

 昨日(8月6日)の朝日新聞朝刊に「派遣規制で署名合戦」という記事が出ていました。
派遣労働の規制をめぐり、人材派遣業界が「規制強化は雇用機会を減らし、労働者にも不利益になる」と規制強化に反対する署名を6月下旬に始め、7月末までに約54万人分を集めたとのことです。署名を始めたのは、仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣の原則禁止などに踏み込んだ労働者派遣法改正の野党案がまとまったのがきっかけ。
 それに対して、労働団体も規制強化を求める署名を集め始めたそうです。「働く女性の全国センター」の伊藤みどりさんが記事のなかで次のように述べています。
 「派遣法を改正すると仕事がなくなるというが、なくなるのは仕事ではなく派遣という働き方。業界は署名集めの前に派遣業の問題点を改めるべきだ」
 
 この記事を読んで、来週の土曜日(8月22日)にお話しいただく五十嵐先生たちが提唱し、積極的に進めている都市計画法改正を求める署名活動に連想が行きました。
 
 その署名を集めるにあたり、中野区の住民の一人が「住民本位の都市計画にするため規制強化すれば、デベロッパーやマンション業者がつぶれるのではないか。日本経済はそれでよいのか」と心配していました。
 私はこの心配は発想のベクトルが違うと思います。都市計画そのものがなくなる訳ではありません。地権者本位の都市計画がなくなるだけです。私たち住民がまちづくりの主人公として、どういうまちに住みたいのか、どういうまちを子どもたちに残したいのかを都市計画マスタープラン(都市マス)に描き、それに整合した都市計画を誘導していくことが求められています。
 例えば、サンフランシスコ市では、毎年、住宅戸数の上限とオフィス面積が年間47万平方フィートと決まっているそうです。その枠内で、より充実した建設計画案を提出した業者が建設を許可されるそうです。皆さん、ご注意ください。日本の建築確認ではありません。建築許可です。
 サンフランシスコ市の都市マスとの整合性が高ければ高いほど、例えば、保育所が併設されている、あるいは太陽光などエネルギーの自給率が高い、1階部分に地元の商店が入ることになっている計画など総合得点が高いところほど、順番に許可されていきます。
 番外になった業者は出直すしかありません。サンフランシスコ市はそれだけのことを求めているのです。
 その方式を日本に導入するとしたら、都市マスへの市民の意見の反映や事業者の計画をフェアに審査するシステムなど問題山積です。しかし、政権が変わろうとする今がチャンス。
 中野区でも何ができるのか、提案したいと思います。
 

 
  

2009年8月4日火曜日

「慰安婦」展 戦争と女性を考える





撮影:本橋成一
    2002年
イラク・ウルク渓谷
 





                                        http://www.shinhyoron.co.jp/cgi-db/s_db/kensakutan.cgi?j1=4-7948-0604-3
 三鷹のロラネット(フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩」が8月1日から3日にかけて主催した「中学生から大人まで誰にもわかりやすい『慰安婦』」展に、昨日、行ってきました。

 同団体はフィリピンと関わる市民団体が2000年に集まって結成し、フィリピンのNGO「リラ・ピリピナ」(元「慰安婦」のロラ(タガログ語でおばあちゃんの意)たちの共同生活を支援)のサポートやロラたちを日本に招いての交流、またロラたちのことを知り、伝えていくために学習会やスケッチ展、ワークショップなどを企画・開催しています。 
 私は大学卒業直後、2年余りフィリピンに留学したり、1989年から3年間、24時間テレビの医療・保健プロジェクトの責任者としてマニラで働いていた関係上、彼らと10年以上前からお付き合いがあります。
私も編者の一人として参加し、2004年に新評論から出版された「平和・人権・NGO」にも、ロラネットに寄稿していただきました。(上掲写真・左上)
 
●右翼(在日特権を許さない市民の会)からの攻撃
 ロラネットでは数年前から今年と同じような「慰安婦」展を行ってきましたが、右翼から今年ほど執拗な攻撃を受けたことはなかったそうです。会場の市民協働センターは目抜き通りから1本横に入った静かな住宅街のなかにありました。センターの真ん前の駐車場には日章旗やのぼりを押し立てた人々が街宣車を従え、シュプレヒコールをあげていました。その数、100人を超えていたと思います。

 三鷹駅からの途中、近くの商店街で警戒に当たっていた20代のおまわりさんに会場への道順を聞きました。曰く、「荒れていますから、できるなら行かない方がいいですよ」同センターの入口には、三鷹市市役所職員と覚しき男性が数十人、ピケを張るように仁王立ちしていました。「ここから入ればいいのですか」との私の問いにも一切、答えず、立ちふさがったままでした。敷地内にいる市民グループ関係者と覚しき中年男性に「入りたいのですが」と呼びかけました。「あなたが駐車場にいる人たちの仲間ではないことがわかればよいのですが」との答えが返ってきました。主催者の友人の名前をあげ、入場がやっと許可されました。
●対決ではなく、対話こそ
 
 「従軍慰安婦」の存在を歴史からなかったものとして消し去りたい人々の渇望の強さを改めて思い知りました。それに屈せず、展示をやり抜いたことには心から敬意を表します。
 しかし、一方で私は違和感を感じたのも事実です。敵か味方かを峻別し、市職員たちによって守られながら学習会を持つことにも疑問を感じたのです。私が出かけたのは月曜日でしたが、前日の日曜日はもっと大勢の右翼が動員されていたそうです。大変な事態であることはもちろん、間違いがありませんが、違う対処の仕方もあったのではないかと思います。
 例えば、入口は全面的に右翼の人たちも含めてオープンにする。右翼の人たちが逮捕も辞さない形で乱入し暴力を振るうのであれば、それこそ警察の出番です。あるいは、右翼の代表の方に会場に入ってもらってアジア各地の元「慰安婦」たちの証言を集めたドキュメンタリービデオを一緒に見たり、ディスカッションをするなどが考えられます。彼らが反対する理由をオープンな場で検証するとともに、主催者がその展示や学習会を通じて何を訴えようとしているのかについても意見を交換することも大切だと思います。
 ガードを固めたことによって、かえって一般市民が容易に近寄れない空間が生まれたことは、まさに右翼の人たちの目論見通りの展開だとも言えます。意見の異なる人たちとの非暴力に徹した付き合い方を追求する、それが平和をつくることだと思います。                       (つづく)
 
◆主催・連絡先:フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)
〒181-0014 三鷹市野崎3-22-16 ピナット気付
TEL:0422-34-5498 FAX:0422-32-9372 E-mail:hachinoko@ba2.so-net.ne.jp

2009年7月26日日曜日

市民自治をつくる


市民自治をつくる~我孫子市に学ぶ情報公開と市民参加~のテーマで、前・我孫子市長の福嶋浩彦先生をお招きし、講演会とワークショップを開きました。

 直接民主主義をベースとした首長と議会の二元代表制の原則に立てば、議員の質問と答弁を区の職員が書いたり、区長が通したい議案を多数政党に前もって根回しをしておくなどの馴れ合いはあり得ません。しかし、そのあり得ないことが現実には横行しています。



 先生がすごいのは、政治学の教科書にはしっかりと書いてあるのに実践されていないことを、本当にやってしまったことです。言葉を換えていえば、当たり前のことを実践したということです。凡百の研究者が幾ら理屈を言っても、先生の実践の前には光を失います。



 こうした議会とのガチンコ勝負を支えたのが市民の支持である一方、先生は市民とも絶えず、論争をし続けてきたと語ります。つまり、市民とも具体的な政策実行の局面、局面で緊張関係にあったのです。政治に市民が関心がないというのは一面的な見方で、例えば、自分たちの家のすぐ近くに巨大マンションが建つとなった途端、彼らはものすごい熱心さで都市計画の勉強を始めます。行政がどのように事業者と住民の言い分をコーディネートしていくのか、利害が相反する場面でこそ、行政の手腕が問われます。先生は市長時代、そうした議論が沸騰している場に飛び込んで議論を惜しまなかったそうです。



 私が学ぶべきは、議会に対しても、市民に対しても、ここが勝負というポイントで一歩も引かないファイターとしての覚悟だと思います。

 

2009年7月24日金曜日

まちを静かにする電気自動車

 環境負荷の小さい次世代自動車として人気沸騰中の電気自動車。排気ガスも出さず、走りもなめらか。そして何よりの魅力はその静けさ。専門用語では「静粛性」と呼ぶのだそうです。最近、浜松市で開発された三輪の一人乗りタイプはスクーター感覚で気軽に使えるコンパクトさがうれしい。

 毎日の買い物や早朝の宅配便など、さらにはカーシェアリングに利用してみたいもの。近い将来、中野区内の区域を限定して電気自動車以外の車の乗り入れ、通過を規制する特区申請も考えられます。
もちろん、交通政策は、中野区だけで取り組めるものではないので、東京都はじめ近隣区との連携が
必須です。

▽充電8時間で、40㌔走行
 この一人乗りタイプは全長2.5㍍、全幅1.3㍍、全高0.85㍍。深紅の色合いも鮮やかに前部から後部にかけてゆるやかに卵型の流線形を描くフォルムが美しい。重さは137.9㌔と軽自動車の5分の1。後ろの駆動輪を二つから一つに減らすことで電気系統のパーツが半分になり、さらに車が軽くなりました。最高時速45㌔。12ボルトの鉛電池を運転席の下、前後左右に4個搭載し、8時間充電で40㌔走行できます。車体のなかはスケルトンのようにすっきりとしています。主なパーツはバッテリー、モータ、コントローラーとDIYで調達できるもので手作りしたものです。

▽まちの騒音防止
 量産に向けて順風満帆に見える電気自動車ですが、その静かさが問題視され始めています。あまりに静かなので、歩行者や自転車などがその接近に気がつかず危険だという訳です。
 
 開発にあたった「HSVP」(Hamamatsu Smallest Vehiclesystem Project・超小型電気自動車を普及させるプロジェクト)理事長で、静岡文化芸術大学准教授の羽田隆志さんは、「電気自動車が静か過ぎるというのは、逆に、今のまちがいかに騒々しいかを示している。電気自動車に音をつける発想ではなく、静かな車でも充分、気がつくようにまち全体を静かに、ゆったりしたリズムで人や車が動く社会に変えていくことが大切」と話してくださいました。
 横浜市や都内で増え始めているカーシェアリングに導入されれば、排気ガスも騒音も出ないため、地域の環境改善にも貢献できると思います。

【「HSVP」(Hamamatsu Smallest Vehiclesystem Project・超小型電気自動車を普及させるプロジェクト)】432‐8061静岡県浜松市西区入野町898
053‐447‐4403

2009年7月16日木曜日

中野あるく・みる・きく第1回



なかけんニュースレター  番外編     あるく みる きく NO.1  2009年7月16日

「あの人、公園の管理人さん?」
~公園居住者の中村さんと私たち~  

●住民とともに高齢化した都営住宅
 

 東京都中野区上高田4丁目。私のうちから歩いて2分ほどのところに、テニスコート1面分ほどの公園がありました。昭和30年代初めに建てられた都営住宅にたくさんの子どもたちが溢れていたころ、住民の要望に応えて東京都によって、隣りの空き地に遊び場が造られました。ブランコ、鉄棒、滑り台といった公園遊具3種の神器も合わせて設置されました。5階建ての住宅には50世帯が住んでいました。正確には公園ではなく、「ちびっこ広場」と呼んでいました。
 

 誕生から半世紀近い時間が流れ、都営住宅から子どもの姿は次第に消えていきました。住民自身が高齢化するとともに、空き家が発生しても、ファミリー世帯を積極的に入居させる誘導策も取られず、
そもそも2DKと狭い間取りそのものを改善しなかったことが大きく影響しています。いわば都営住宅は、ちびっこ広場とともに老いるがままに放置されたと言えます。

●ビオトープとして再生
1999年、東京都から中野区に対して、都営住宅の住民に代わって、この場所を管理運営するグループを募りたいとの連絡がありました。たまたま近くの区立公園の管理・運営していた私の友人に打診があり、その運営を担当することになりました。ちびっこ広場にとっては再生のチャンスが訪れたのです。私たち「ちびっこ広場運営委員会」が、一番最初に中野区公園課(当時)の担当者にお願いしたのは、今にも壊れそうな遊具の撤去でした。そのときの担当者の言葉も興味深いものがありました。
 「一度、撤去すると将来、また皆さんが設置したいと思っても、行政としては二度と対応できませんからね」
 私たちはそれで結構ですと答え、ちびっこ広場は人間の子どもたちを含むビオトープとして蘇りました。入口の看板にはこう書きました。                     
               「ここには滑り台、ブランコ、鉄棒もありません。
             だけど、たくさんの種類の木・草・虫や鳥などが暮らしています。
                仲良く遊んでね」
 
 「トノサマバッタやヨコバイなどの虫捕りに夢中の子どもたち」
 「昼休みにほっと一息、コンビニ弁当を広げる営業と覚しきサラリーマン」
 「ペットの白色レグホンを散歩させるご近所のおばさま」かと思えば、

 甲羅がガラパゴス諸島のゾウガメのように盛り上がっている、手の平サイズのリクガメを放して歩かせる30代の若者もいました。「コイツもこういう草っ原が好きなんですよ」ちびっこ広場は訪れるそれぞれの人によって様々な顔を見せてくれました。

 しかし、10年後の今年5月、その存続を求める私たちの働きかけは実を結ばず、都営住宅の建て替えにともない、駐車場の一部になりました。
 今や、工事現場のグレーのフェンスに囲まれて見ることもできない、ちびっこ広場というまちをつくる一つの装置が生まれて消えるまでを振り返ると、様々なことが浮かび上がります。


●「あの人、公園の管理人さんなの?」
 一つは、場を媒介して人と人との関係が変化していくことです。

 ちびっこ広場には5年前から千葉県生まれの50代半ばの方が住んでいました。仮に中村さんと呼びましょう。隣りの都営住宅の住民を含めて、ご近所からは「ホームレスがいると気味が悪い」「おまわりさんに連絡して出ていってもらおう」の苦情が次第に大きくなり、「なぜ、ちびっこ広場運営委員会は放置しているんだ」と私たちにまで風当たりが強くなりました。

しかし、中村さんが私たちと一緒に草刈りや花壇の水やりをしているのを目にするにつれ、その声は次第に消えていきました。しばらく経ったあるとき、近所の人から「あの方はこの公園の管理人さんなの」と尋ねられたときは、内心、「やった」とガッツポーズをしました。
 私たちが中村さんをちびっこ広場を手入れする仲間の一人として接していることが、地域で見えたとき、住民の皆さんのなかにも彼の存在を受け入れる心のゆとりが生まれたのではないでしょうか。人権擁護の立場からホームレスの居住権を主張することは可能ですが、現実の暮らしのなかでは反発を生みやすいことも事実です。私たちはそうではない方法をとりました。それは中村さんが「公園」という公共空間を美しくする作業を私たちと一緒に行っている姿をありのままに見て貰うことだったのです。地域の人たちがそれをどう受けとめるのか待つことであり、任せることでもありました。
 中村さんはちびっこ広場閉鎖後、妙正寺川の対岸にある落合公園に移り、健在です。


* 本稿は、加筆修正後、「ひととまちの関係性をデザインする(仮題)2010年春、新評論から刊行予定」に所収します。
* 続きをお楽しみにして下さい。


講演会&ワークショップ

「市民自治をつくる」
~我孫子の事例に学ぶ情報公開と市民参加~
講師  福嶋浩彦氏
(中央学院大学教授 前・我孫子市長)
● 2009年7月25日(土)
       午後2時~5時
● 中野区勤労福祉会館3階 大会議室
● 参加費  500円

「中野のまちのここが問題」「こんなふうにしたいよね」みんなでわいわいガヤガヤ話しませんか。妙案が浮かぶかもーーー。

発行年月日:2009年7月16日
発行:中野政策研究会(代表・三好亜矢子)
メール・bxt01375@nifty.com
TEL・FAX 03-3389-3292
MOBILE  090-3523-3274
Blog http://eco-shift-nakano.blogspot.com/

2009年6月17日水曜日

中野区の対策 CO2削減でなく増加を容認?1

23区内では千代田区がEUと同レベルの「20・20」(20年までに20%削減)を掲げトップランナーです。
さらに国とのライバル意識の強い東京都は「20・25」(20年までに25%減)をめざしています。
翻って、中野区の環境基本計画をみてみましょう。
昨年、策定されたものですが、目標年が2017年と国際的な基準に合致しないため、厳密な比較はできませんが、2004年比で10%削減です。2004年のCO2排出量94.4万トンから、85.2万トンに減らすとしています。
これだけを読むと「そうか、中野区も減らす方向で努力しているんだ」と思います。
しかしです。
京都議定書の基準年である1990年の排出量を知って驚きました。約83.5万トンだったのです。すなわち、2017年の目標値は削減どころか、逆に増えていたのです。2017年から2020年までの間に劇的な削減努力が払われるのでしょうか。にわかには信じがたいシナリオです。実は私はこの環境基本計画策定に、中野区環境審議会のメンバーとして関わっていました。この数字に今の今まで気がつかなかったことを告白します。削減という言葉に幻惑されていました。
「どげんかせんといかん」という気分です。

ビッグコミックに温暖化防止意見広告


[Photo]6月16日、おもしろいニュースが「気候ネットワーク」(京都)のメルマガから入ってきました。国内外の環境NGOと「MAKE the RULEキャンペーン」が共同して、6月2日に日本経済新聞、10日にはビッグコミックの裏表紙に意見広告を出しました。内容は、「経済危機と地球温暖化の二つの怪獣に襲われている日本を救うため、麻生首相よ、ヒーローになれ!そのためには2020年までに1990年比、CO2を25%以上削減せよ」というものです。ビッグコミックと言えば、確か、麻生総理の愛読書の一つ。奇しくも、同日、麻生総理が発表した数字は、1990年比8%減に留まりました。京都議定書の6%減から僅かに2%上乗せしたに過ぎません。EUが同年比、20%減を宣言しているのに比べると、あまりにKYです。