中野政策研究会

東京都中野区に住んでいる三好亜矢子です。 おしゃれにエコシフトする中野区民31万人の挑戦に向けて、 日々是学習、思考、行動。 「まちをデザインする」を執筆中。

2010年3月25日木曜日

NPOともっともっと連携


歳入は6%減 
  中野区の来年度予算案が発表されました。一般会計は今年度に比べて6%減の963億7400万円、介護保険などの特別会計を含めると1516億3000万円と18%減となりました。どうしても支払わなければならない経費(義務的経費といいます)は総額560億円程度を占めています。その内訳は職員2400人の皆さんの人件費が250億円、生活保護などの扶助費が230億円、残り80億円が借金返済(公債費)です。黙っていても、これだけの費用が消えていきます。この比率が高くなればなるほど、家計でいえば、可処分所得、自由になるお金が減っていきます。中野区の場合はこの割合が09年度は54%でしたが、来年度は58%にアップしました。                          
                           上の写真は昭和30年代。青梅街道の鍋横あたり>                
NPOとの連携
  こうなってくると、ますます重要になってくるのがお金の使い方です。     
  私はその一つとして、NPOとの連携に今まで以上に力を入れるべきだと思います。今年初め、市民や住民、NPOの声を政治に反映するための「市民キャビネット」が立ち上げられました。これまでの行政の下請け機関であったNPOが本来の自主性を取り戻し、行政とのパートナーシップを結ぶ原点に帰ることが重要です。
行政よりも専門知識が豊富で機動性に富むNPOと行政が連携することで、NPOや行政それぞれがばらばらに行うよりも、掛け算的に効果が大きくなります。この連携こそ、民主党政権の新しい公共の担い手の一つになりうるのではないかと思います。

■情報コーナーの閉鎖はNG
  ところが、中野区はこうした世の中の大きな流れとは別に、4年前に設けられた「公益活動情報コーナー」を今年3月末までで閉鎖します。退職後の団塊世代の力を地域に還元するためのコーディネート、商店街の空き店舗を利用したヤングママたちの溜まり場など現在、中野区内にある約170あるNPOを結ぶだけでも、大きな動きが生まれます。
  私は身近な問題に対応する高い機動力と専門性を持つNPOと地域がゆるやかにつながっていける施策に力を入れます。
  

2010年1月5日火曜日

商店街直営ギャラリー ~小さい場所の大きな未来



【深川いっぷく】深川江戸資料館のすぐ近く。お客さんが20名入るともういっぱい。

でも志は高い!

高崎のだるま屋さんから仕入れた白だるまをアートするコンテスト(写真上)や深川観光のレンタサイクルとアイデア満開。お店は元調剤薬局を改造、お向いの布団屋さんの店先もいつの間にかギャラリー会場化。それもその筈、深川資料館通り商店街が運営するまちづくり拠点でもあります。

*中野のまちにもこんな「場」、欲しいです。
◆深川資料館通り商店街「深川いっぷく」

〒135-0021 江東区白河3-2-15

●電話:03-3641-3477

●営業日:水曜日~日曜日、祝日  13:00~20:00水曜日のみ~18:00 

●休業日:月曜日、火曜日

2010年 大きな物語をつくる


2010年、新しい年になりました。昨年、最も大きな変化は54年ぶりの政権交代。政権誕生から何事も大目に見るハネムーンの時期と言われる100日間も過ぎました。税収の2倍以上に膨らんだ予算案やガソリンの暫定税率の据置きなどマニフェスト違反との声もよく聞きます。
しかし、私はこれまでの失政のつけが魔法のように一挙に解消すると期待し、早手回しにがっかりするのは気が短いと思います。それでは以前のようなお任せ民主主義に戻ってしまいます。短期的な解決を求めるのではなく、問題そのものを見つめじっくりと中長期の方針を出すことが大事だと思います。「日本がこれからどうやって食べていくのか」について私たち市民一人ひとりが考えることが求められています。
●第1は仕事をつくること
今年は昨年の「日比谷派遣村」に代わって政府が東京都に依頼して代々木のオリンピックセンターで4日、さらに場所を移動して継続中です。(1月半ばまで延長)リストラ、派遣切りなどによって失業し、社員寮を追われたりアパートの家賃を払えなくなり住まいを失った人たち、およそ800人が身を寄せています。安心して温かく寝起きができる住まいは単に物理的な場所というより、明日に向かって進むためのエネルギーを生み出します。その次に必要なことが仕事です。雇用をあっせんするだけでなく、雇用そのものを作る大きな物語が求められています。



グリーン・ニューディールを起こす 提案  その壱
 2009年末に政府が発表した「新成長戦略」はこれからの重点産業として「環境・エネルギー、健康(医療と福祉)、アジアへの展開、観光」などを挙げています。民主党のもう1つの大きな基本方針として「地域主権」があります。中野のまちでこれらを組み合わせ、雇用そのものを作ることを提案します。最初の手がかりはヤンキー世代の一国一城志向を応援です。

●介護はヤンキー世代が主役  
 私が昨年9月、中野駅前で介護について演説し
ていたときに20代前半の若者に声を掛けられま
した。鼻ピアスこそありませんでしたが、髪は金髪のモヒカンで腰には太いチェーンが3~4本ぶら下がり、ヤンキーという言葉がぴったりでした。小田原近くの特養(特別養護老人ホーム)で介護
福祉士として働いているとのこと。勤続2年。口の減らないばあちゃんたちとジョークを飛ばしながら仕事をするのが楽しくてたまらないと片方の肩を揺らす。仕草がどことなく不良っぽいのは、つい最近までのやんちゃ時代の名残かしらん。
 今や、典型的な3K職場(汚い・危険・給料が安い)の1つ、介護現場を担っているのは彼のようなヤンキー世代です。家族思いで何よりもいつかは「自分のお店を持ちたい」という一国一城の主志向が強いのが特徴です。彼も言っていました。「今、お金を一所懸命に貯めています。将来、理想的な老人ホームを作りたいから」。ただ、残念ながら中野には寝に帰るだけ。働く気はない。小田原の業者を選んだのは給与が一番よかったからと明快です。

●場所の提供が効果的
将来、彼のような起業の意思を持つ若者を支援するのに効果的なのが場所の提供です。小・中学校の跡地や地域センターなどの公有施設をスペースとして安く提供したり、商店街の空き店舗を区が間に入ることで借りやすくするなど様々な方法
が考えられます。「中野区は安く住むだけでなく、お店を持ちやすい」という評判が広がればこちらのもの。
早稲田大学のまちづくりの専門家がつぶやきました。「シャッター通りの商店街こそ商機がごろごろ転がっている」日用品の御用聞き、あるいは地方からのお取り寄せをお手伝い、たまり場にもなる食堂経営、いっそ、家庭料理の達人として働いてもらってもよいですね。福祉は福祉、ビジネスはビジネスと縦割りではなく横につながっていく。若者とおばあちゃん、おじいちゃんという異世代が手を組めば、新しい世界が広がります。

2009年11月25日水曜日

待機児対策、待ったなし ~行政と企業でできること~


●待機児は327名
 今年4月1日現在、中野区の待機児の数は旧定義(認可保育園への入園を求める人の数)で327名。実際にはその半数弱は認可保育園に入ることをあきらめ、無認可の保育所などに預けています。一方、「とても入れそうにない」と最初から申し込み自体をしなかった家庭も多く、潜在的なニーズはさらに大きいと考えられます。

●予想を超える保育ニーズ
マンション建設ラッシュの続 く江東区の例をあげましょう。同区は若いファミリー層の流入により2年前の待機児は352人。そのため、区としてマンション建設の要件として保育所設置の要綱を定める、認証保育所などを積極的に誘致するなど90億円を投資。その結果、1200人分の定員増を達成して一息ついたと思ったらとんだ見当違いだったそうです。あっという間にその枠は埋まり、さらに300人の待機児が出てしまったそうです。私は女性たちが悲鳴をあげているように感じられてなりません。「『男は仕事、女は家庭』なんて誰が決めたのだ」という叫びです。

● 働きたいママは8割
3歳未満の子どもを持つ女性 の就労率を欧米と日本で比較すると、欧米は6割ですが日本は3割弱に過ぎません。では、日本のママたちは働きたくないと思っているのでしょうか。内閣府の最近の調査によれば、ママたちの実に8割は保育環境さえあれば働きたいと答えているのです。仕組みがないばかりに能力も経験も豊かな女性たちが仕方なく家庭に引っ込んでいるのはとても大きな損失です。  11月24日、朝日新聞の夕刊でショッキングなタイトルの連載が始まりました。「女性活用小国のカルテ」です。国連開発計画09年版「人間開発報告書」の指標の一つ、女性の活躍度を示す「ジェンダー・エンパワメント指数(GEM)(注)」で日本は109カ国・地域のうち57位だったことが紹介されていました。
 1  スウェーデン
 2  ノルウェー
 3  フィンランド
 4  デンマーク
 5  オランダ
 6  ベルギー
 7  オーストラリア
 8  アイスランド
 9  ドイツ
       中略
    27日本(95年) 
 54 ホンジュラス
 55 ベネズエラ
 56 キルギス
 57 日本
 58 スリナム
 59 フィリピン
(注)1995年、北京で開かれた第4回女性会議をきっかけに女性の意思決定への参加度を見える形にするためにスタート。国会議員や管理職、専門・技術職の女性比率、男女の賃金格差などを評価。

「世界第2位の経済大国が57位なんて信じられない」というのが正直な感想でしょうか。しかし、環境が整備されないために女性が働きたくても働けないという現実を見れば、実態とかけ離れた数字とはとても思えません。
●思い切って取り組む
前述の江東区のように作って も作ってもなお、保育ニーズに応えられないという現実に対して、行政には待機児は何が何でも出さない、100%答えるという断固たる姿勢が求められていると思います。子どもの社会性を高める、濃密過ぎる親子関係にゆとりを持たせるなどの集団保育のメリットは数多いですが、私が強調したいことは一つ。なぜ女性が母親になった途端に働くことを我慢しなければならないのかという点です。
●男性の育児休業取得を応援
 待機児問題の影であまり取り上げられないのが男性の育児休業の取得率の低さです。少し前の数字ですが、2003年、女性の取得率64%に対して男性は0.33%でした。男女に変わりなく育児休業法の改正により、取得期間が現在の1年から1年6ヶ月に延長され、休業時の給付金も休業に入る前の賃金の50%が給付されることになりました。男性の子育てを社会の文化として積極的に応援することが大切だと思います。(続く)

2009年11月1日日曜日

施設と在宅が連携 ーホームシェアリングー


                     ゆうらくではリフトなど福祉機器が縦横に
                          活用されている。


 ゆうらくの続きです。


 同施設は、03年度から06年度にかけて厚労省の未来志向研究プロジェクト「ホーム・シェアリング」を実施しました。5ユニットの1室、計5室をホームシェアリング対応にあて、利用者は在宅と施設を1~2か月ごとにローテイションする方式です。06年度には1週間単位で在宅と特養をスイッチしました。


 同施設の仕掛け人である山野良夫参事は「介護の技術も充分、受けていない家族が在宅介護でくたくたに疲れているのを見ていられない。プロならではの技術を生かしたい」とのことから出発したそうです。


 同施設がまとめた報告書「平成18年度 老人保健健康増進等事業 在宅ケアマネジャーを中心とした在宅と施設機能の有機的連携事業報告書」を読んで、特に印象的だったのは次の4つです。




 ①利用者の状態の改善 


  ●質の高いケアと居心地のよい環境を提供できる施設で利用者の体力、意欲が回復する

  ●家族のレスパイトにも効果的。


 ②入所者との交流


  ●1週間ごとに外からの風が入ってくることで、施設の入所者にいい刺激となる。


 ③財政面での負担軽減


  ●在宅よりも施設利用はコストがかかるが、在宅と施設を交互に利用することで負担が軽くなる。


 ④ケア体制の確立


  ●居宅のケアマネが在宅と入所時にかかわらず、一貫して担当することで、全体的なケアのシステムができた。在宅と施設との風通しがよくなった。




 上記のプロジェクトは2000年の介護保険導入後の熱気がまだ厚労省のなかに残っていたときに立ち上げられました。その後、次第に予算が削られ、研究プロジェクトは成果が上がったものの、それが全国モデルにはなりきらないまま立ち消えになってしまいました。


 財政的な負担の大きい特養の新設より、今、既に全国におよそ3万ある介護施設と在宅とがいかに有効に連携していくのかが問われています。

施設が「おうち」に進化する


 上野さんの在宅重視のお話しの関連です。「家」であることを追求した施設もあります。



●塀も看板もない「おうち」


 昨年秋に、鳥取県西伯郡南部町落合にある特別養護老人ホーム「ゆうらく」を訪ねました。


米子市駅前から車で15分ほどの距離、田園風景のなかに白を基調にした瀟洒な建物です。56歳で急逝した福祉施設にユニットケアなどの先端的なコンセプトを導入した建築家の外山義氏が設計した最後の作品。一万5千平方メートルの敷地に対して、3階の建物の延べ床面積がおよそ6500平方メートルとゆったりしています。


●おしゃれなリビング

 92名全員が個室を持つと同時に、9つのグループに分かれユニットケアが行われています。ほとんどの方は認知症です。それぞれのユニットのリビングは中庭に面すると同時に外の景色も目に入るようにデザインされていて、内と外の両方に視野が広がります。フェンスも門扉もありません。隣りの田んぼで一仕事した近所のおばちゃん、おじちゃんが、一服しにリビングの縁側にやってきます。


 ユニット同士はまっすぐな廊下でつながらず、それぞれが素通しにならないよう、目隠しの曲がり角を持ちます。コンセプトは収容する場所ではなく、生活する場所として「家」としての雰囲気を作り出すこと。そのための最大の要素が建築というハードです。そこに住む人たちにとっての居心地の良さや気持ちの良さを最大化することです。施設の「おうち化」がここでは実現しています。

2009年10月27日火曜日

住まいとケアを結ぶ 

■元気を増す「協」セクター
 10月13日、「おひとりさまの老後」の著者である上野千鶴子さんをお招きして、中野サンプラザで公開学習会を持ちました。名づけて「暮らしの安心を地域でつくる」
 上野さんは「官」と「私」、「市場」の3つが支配してきた介護サービスの担い手として、最近、着々と成功を収めつつある「協」セクター(Comon・入会地・共同体)の台頭に期待を寄せると語りました。
 「協」セクターの形は以下のとおり。
・ 福祉生協・ワーカーズ・コレクティブ
・ NPO(非営利民間事業体)・農協
・ 高齢協・有限会社・株式会社

■生活支援付きの普通のおうち 
その一例が、生活クラブ生協・神奈川から生まれた厚木市のヒューマン・サービス・ネットワーク(HSN)。介護のニーズを一番、わかっているのは、当事者である私たちとの思いから、それに応えるためのサービスを皆で力を合わせて創り出す運動です。過去10年間で、訪問介護やデイサービスなどを提供するNPO法人や 社会福祉法人まで誕生しています。
その一つ、NPO法人MOMOが設置したサービスハウス(生活支援付きの共同住宅)は企業の独身寮を改修したもの。4階建ての42人定員。終のすみかとなる特別養護老人ホームと似ているようで全く違います。特養が「施設」であるのに対して、サービスハウスは普通のおうち。ここが決定的に違います。どこにでもあるマンションに生活支援が付いているのがポイント。介護度も年齢も関係なし。外部のケアマネや事業者の出入りも自由という風通しの良さが魅力です。

(写真・在宅で暮らすには福祉機器の活用も )

■さて、中野はどうする?
 中野の高齢化率は今年10月1日、20%を超えました。23区平均よりやや上です。区内8つの特別養護老人ホームのベッド数は680。空きを待つ人は1000名を超えています。年に20~30床の入れ替わりですから、入居できるのは全くいつになるかわかりません。「施設」入居を待つのではなく、「在宅」で命を全うするための新しいアプローチが必要です。大きくは二つあります。
① 在宅で訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイなどありとあらゆる介護資源を最大限に使いこなし、カスタマイズ(個別ケア)を追求する。
② 子育て卒業世代の女性や若者の介護に係わる起業を行政として応援する。空き教室や店舗などを行政が提供または積極的に仲介し、インフラ整備に協力する。