東京都中野区に住んでいる三好亜矢子です。 おしゃれにエコシフトする中野区民31万人の挑戦に向けて、 日々是学習、思考、行動。 「まちをデザインする」を執筆中。

2009年11月1日日曜日

施設と在宅が連携 ーホームシェアリングー


                     ゆうらくではリフトなど福祉機器が縦横に
                          活用されている。


 ゆうらくの続きです。


 同施設は、03年度から06年度にかけて厚労省の未来志向研究プロジェクト「ホーム・シェアリング」を実施しました。5ユニットの1室、計5室をホームシェアリング対応にあて、利用者は在宅と施設を1~2か月ごとにローテイションする方式です。06年度には1週間単位で在宅と特養をスイッチしました。


 同施設の仕掛け人である山野良夫参事は「介護の技術も充分、受けていない家族が在宅介護でくたくたに疲れているのを見ていられない。プロならではの技術を生かしたい」とのことから出発したそうです。


 同施設がまとめた報告書「平成18年度 老人保健健康増進等事業 在宅ケアマネジャーを中心とした在宅と施設機能の有機的連携事業報告書」を読んで、特に印象的だったのは次の4つです。




 ①利用者の状態の改善 


  ●質の高いケアと居心地のよい環境を提供できる施設で利用者の体力、意欲が回復する

  ●家族のレスパイトにも効果的。


 ②入所者との交流


  ●1週間ごとに外からの風が入ってくることで、施設の入所者にいい刺激となる。


 ③財政面での負担軽減


  ●在宅よりも施設利用はコストがかかるが、在宅と施設を交互に利用することで負担が軽くなる。


 ④ケア体制の確立


  ●居宅のケアマネが在宅と入所時にかかわらず、一貫して担当することで、全体的なケアのシステムができた。在宅と施設との風通しがよくなった。




 上記のプロジェクトは2000年の介護保険導入後の熱気がまだ厚労省のなかに残っていたときに立ち上げられました。その後、次第に予算が削られ、研究プロジェクトは成果が上がったものの、それが全国モデルにはなりきらないまま立ち消えになってしまいました。


 財政的な負担の大きい特養の新設より、今、既に全国におよそ3万ある介護施設と在宅とがいかに有効に連携していくのかが問われています。

施設が「おうち」に進化する


 上野さんの在宅重視のお話しの関連です。「家」であることを追求した施設もあります。



●塀も看板もない「おうち」


 昨年秋に、鳥取県西伯郡南部町落合にある特別養護老人ホーム「ゆうらく」を訪ねました。


米子市駅前から車で15分ほどの距離、田園風景のなかに白を基調にした瀟洒な建物です。56歳で急逝した福祉施設にユニットケアなどの先端的なコンセプトを導入した建築家の外山義氏が設計した最後の作品。一万5千平方メートルの敷地に対して、3階の建物の延べ床面積がおよそ6500平方メートルとゆったりしています。


●おしゃれなリビング

 92名全員が個室を持つと同時に、9つのグループに分かれユニットケアが行われています。ほとんどの方は認知症です。それぞれのユニットのリビングは中庭に面すると同時に外の景色も目に入るようにデザインされていて、内と外の両方に視野が広がります。フェンスも門扉もありません。隣りの田んぼで一仕事した近所のおばちゃん、おじちゃんが、一服しにリビングの縁側にやってきます。


 ユニット同士はまっすぐな廊下でつながらず、それぞれが素通しにならないよう、目隠しの曲がり角を持ちます。コンセプトは収容する場所ではなく、生活する場所として「家」としての雰囲気を作り出すこと。そのための最大の要素が建築というハードです。そこに住む人たちにとっての居心地の良さや気持ちの良さを最大化することです。施設の「おうち化」がここでは実現しています。